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Mentor’s Eye 上原 仁氏 メッセージ

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■第15回 「起業おじさんの戯れ言」
                                                   [2014/10/06メルマガ配信]
株式会社マイネット
代表取締役社長 上原 仁氏
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先日より情報通信研究機構(NICT)から起業を志す若者を支援する活動のメン ターという役割を仰せつかった。光栄なことだが、自分がまだ成功もしていな いのでお恥ずかしい。

これまでに2度のピボット(事業転換)を経験し、たくさんの仲間との別れも 味わった。資金調達で得た2億円と事業譲渡で得た3.5億円の資金を海外事業や 新規事業で綺麗に溶かした。成長期に入った現在も次のガンホーを狙って奮闘 中である。

そんな一人の起業おじさんが、これまでに知り得たことを書き起こしてみた。学生時代から起業を志し大企業就職後の起業で10年サバイブした実例として。

学生時代から将来起業するのだと思っている人の特徴として、とにかく普通で はいられないというのがある。その中にも2種類あって、1つはすべての常識を 疑ってかかるタイプ。イノベーター。押し付けを嫌う。理に適わぬことは頑と して受け付けない。ハマるとすごい成果を上げるが、多くのシーンでドロップ アウトする。

もう一つは何でも人に勝たないと気が済まないタイプ。よくあるタイプ診断の コントローラー型。何でも一番になろうとするので多少の非合理も飲み込んで 環境適応する。どイノベーションよりもすでにビジネスモデルのある領域に強 い。結局起業せずに企業の出世コースにハマる人も多い。

イノベーターもコントローラーも次元が低ければただのうざいやつである。どちらが成功しやすいかは多くのサンプルを見ても判断はしにくい。ただ言えることは、性格を根から変えることは出来ないので自分の向き不向きに合わせてタイプを磨き上げるのがいいということ。

スタートアップブームのロジックではイノベーター以外はノーみたいな風潮はある。投資家目線では打率4割のシュアなヒッターよりも打率2割のホームランバッターの方がリターンが青天井だからそうなっている。

だがそれに流されてコントローラータイプが無理してイノベーターになろうとするのは勧めない。イノベーターがモテるのはベンチャーエコシステムの都合であって起業の成否とは関係ない。コントローラーは胸を張って早期に利益を生む事業開発に勤しむべきである。

人間、結局のところ自分の土俵で相撲を取るのが一番成功に近い。得意技を捨てるな、といいたい。

現在の日本の起業環境は10年前と比べると格段に洗練されている。資金調達も支援人材も先例も揃い、起業はキャリア選択肢の一つになった。もし今私が学生だったなら早めの起業を選ぶ。学生起業→売却→専門領域で就職→人と金の準備→2年で起業→4年1サイクルでバイアウトか上場 というあらすじが理想だ。

学生のうちに起業を経験しておくのはおすすめ。あらゆるコストが小さい。チームの組成はし易いし安い。失敗のコストも小さい。起業のやり方を六本木の大人たちがやさしく教えてくれる。コストが小さい分軽いBSで2年くらいの1サイクルを味わい尽くせる。いざ就活となればスーパーサイヤ人状態。

その上で、卒業前に学生起業の成果を売却する経験を特に勧めたい。事業=CF×時間 というシンプルな公式を体で学べる。事業づくりで学べるのは片輪。PLのみである。公式でいえば事業=客数×客単価。ExitまでやればBSが体につく。これで初めて経営の両輪になる。

学生起業で売却をするコツはごくシンプル。利益を出すこと。事業が何であれ利益があれば値はつく。そこに人手がかかっていなければなおよし。100万円でもいいから、事業に値付けして買ってもらう経験が大きな意味を持つ。

学生起業し売却した後に一度将来の専門分野で就職するのはおすすめ。学生起業時に渇望しても手に入らなかったものを身に着ける時間になる。知識、組織、事業開発の型など。副次効果は分野のインサイダーになること。人脈。フィールドはベンチャーでもよし金融でもよし。ただし旧来型大企業は勧めない。30年前の論理が身について危ない。

起業志望者の就職中は本業でわかりやすい成果を出しておくに越したことはない。○○で一番。○○の立ち上げ、など。仕事が名刺代わりとなり、その名刺に人が集まる。ただし2年やそこらでは大した成果を出せないことも多いので、無ければ無いで知識と出会いには貪欲に。

起業は若いうちの方がよい。大切なことだからもう一度。起業は若いうちの方がよい。起業家には時間が何よりの資産。若い起業は時間の資産家。「経験を積んで知識やトラックレコードをつけてから」は言い訳。最速で経験も人脈もつける。学生起業→売却→専門分野を2年で吸収。これがおすすめコース。

起業するときは市場の選択が一番大事。選定の軸はこれだけ。
 伸びてるか?
 儲かるか?
 得意技か?
3つともマルがつくことをやる。「伸びるはず」はダメ。土台でも超ミクロでもいいから伸びてる事実が資金を惹きつける。「儲ける気はない」はダメ。金脈を掘らない起業家は消える。

起業といってもほとんどの物事は社会一般の摂理の通りに進んでいく。始めて2年もすればお金は一般並みにかかるし、競争には規模の経済が働く。そんな中でも起業を選択する意味は理念を決める権利。起こした事業の周りにセーフゾーンを作ってそこの合理を理念に最適化する権利を得ること。

理念のセーフゾーンをどこまで広げられるかは起業家の器にかかる。会社内さえまとまらないこともあれば、業界を越えて世界を変えることもある。何を巻き込んで変えて行きたいのか。それを最初に定めておければ判断をぶらさずに済む。ぶれると成長は遅くなり、崩壊の確率も高まる。

起業してすぐはとにかく走り尽くすこと。起業後1年半は起業家から「創業オーラ」が出る。周りは驚くほどこのオーラにやられる。採用も広報も資金調達も、何をやっても期待値以上の成果が上がる時期が最初に訪れる。この間にその後の成長路線を作り切れるかどうかで起業の成否は分かれる。

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