トップ > 連載・コラム > 注目のベンチャー紹介 > 有限会社アグリフューチャー 代...

next pre up

有限会社アグリフューチャー 代表取締役 女川 源 氏 ~平成24年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会 発表企業~

124x138px 有限会社アグリフューチャー 女川 源氏 

<氏名> 女川 源氏
<社名> 有限会社アグリフューチャー
<役職> 代表取締役
<設立> 2012年2月

 農業生産法人アグリフューチャーは、東日本大震災の経験を経て、2012年2月に女川源さんが宮城県仙台市で設立しました。女川さんは、岩手県盛岡市に生まれ、仙台で育ち、東北学院大学工学部卒業後、大手通信会社に入社。約14年に渡って企画から研究開発、営業までICT分野の仕事に幅広く従事しました。その間、ビジネスとしての農業に興味を持った事がきっかけで、転職を決意。農業の勉強をゼロからスタートすると同時に、不動産会社、通信建設会社、人材派遣会社、レストラン経営など、様々な事業を経験した後、震災をきっかけに、本格的に農業の世界に入り、ITを駆使した農業で地域の復興に貢献し、新しい農業経営を目指したいと、農業生産法人を立ち上げました。

1.初めに

 第15回(平成24年度)NICT情報通信ベンチャービジネスプラン発表会で、みやぎモバイルビジネス研究会からの推薦を受けて、「農地のプロパティマネジメントとSNS利用の市民農園」をテーマに女川さんから、ビジネスプランの発表が行われました。農業とICTを掛け合わせ、農家の視点=現場の立場で、新しい農業運営の在り方を提案しています。社名の由来は「農業の未来を作りたい」と言う思いで、アグリフューチャーと名付けられました。また女川さんは、2012年には東北スマートアグリカルチャー研究会にも参画して理事に就任。2013年には「農業ITマイスター」と呼ばれる、農業でITを活用する為の人材育成事業を、この研究会で仙台市から受託しています。

2.【テンガロンハットで自分をプロデュース】

(聞き手) トレードマークのテンガロンハットが、とてもお似合いです。女川さんが脱サラして、飛び込んだ農業の世界は、現在TPPなどでも非常に注目されていますし、復興には欠かせない重要な産業だと理解しています。とは言え、農業で起業するのは、日本では、とても珍しい事だと思います。

(女川氏) 農業は独特の村社会と言う側面があります。私のような新参者は名前を覚えてもらうのは、実はとても難しい事でした。しかし、テンガロンハットを被っていると、良い意味で親しみを持って頂け、お声がけしてもらえるのです。「新しく入った帽子をかぶっている人=女川さん」と、話題になる事もあります。そうすると、別の地域の人でも「帽子を被った人の所で野菜が採れたけど、そちらで買ってくれない?」と言った話題も成立するようになり、メリットを感じてこの姿で仕事をしています。

(聞き手) 名前は覚えてもらえなくても、特徴ある姿で覚えてもらえれば、自然と地域の中に溶け込めるのですね。良い意味で自分を売り込む素晴らしい戦略ですね!そもそも、ご実家は農業との関わりがあったのでしょうか?

(女川氏) 先祖は、初代仙台藩主の伊達政宗にもゆかりのある「登米伊達家」に仕えた軍医の家系です。曽祖父は宮城県の北にある現在の登米市(とめし)登米町(とよまちょう)で、軍医をしていたので、近所に小作人の方々がいましたが、知り合いがいると言う程度です。祖父も医者、父は大学の工学部教授で、農業にはほとんど縁がありませんでした。

179x293px BP発表の女川氏 

3.【農業でITを生かす】

(聞き手) 今回のビジネスプラン発表会に出場された経緯から教えていただけますか?

(女川氏) みやぎモバイルビジネス研究会*の主催で、ビジネスプラン発表会の予選、東北大会が開催されたのですが、そこでの発表から、今回の全国大会へとつながっています。地方発のモバイルインターネットビジネスを創出する為の研究会で、私が進めている、農業とITをかけあわせた取り組みに関心を持っていただき、原会長にお声掛け頂きました。

(聞き手) 農業の中で、ITをどのように使いたいと思われたのですか?

(女川氏) うちの農場は宮城県大崎市鹿島台にあり、自宅は仙台市内にあるので、その距離は約50キロあって、車で移動しても片道1時間以上かかります。何かあっても、すぐに行ける距離ではありません。しかし、農場の様子は常に気になるのでWEBカメラやセンサー類を使って、自分の作業の補助にならないかと考えた事が、農業の中にITを取り込むアプローチの方法でした。

 最近では、IT企業が農家に注目して、様々なシステムを売り込む“シーズ”の取り組みはありますが、農業者の視点で、なおかつITの事もわかる、現場からの声=“ニーズ”に基づいて農業でITを使っているケースは初めてで、ユニークな取り組みだと自負しています。

(聞き手) 自宅から数十キロ離れた所に農場を持っている人は、そんなに多くはないようにも思えますが、震災で状況は変化しているのでしょうか?

(女川氏) 宮城県の場合、震災で被災して仙台空港のまわりで農地を失った人達の例で、たとえば蔵王の麓などで、現在は団体で農業を再開している方々がいますが、亘理地区に仮設住宅があり、そこから約1時間かけて農場まで通っています。このように実は、震災で職住分離した、一次産業に従事している人の数は、少なくはありません。

 他にも石巻では、農地も家も高台で無事だったものの、その場所が被災者の移転地になったと言うケースも見られ、住宅地だけはそのままで、農地は別の場所に移転を余儀なくされる方々もいます。これまでは自宅の隣にビニールハウスがあった人達も、農地が遠くに移転した事で、すぐに農作物の状況を確認出来ないと言う新たな課題が生まれていますので、私達の作ったITシステムが役立つのです。

(聞き手) これまで農地だった所を、明け渡さなければならないと言う現実があるのですね。遠隔地から、WEBカメラで農地の様子をほぼリアルタイムに見られるシステムは、自宅と農地が離れてしまったと言う人達には、おっしゃる通りニーズがありそうです。同時にコストをいかにおさえて構築するかも大切な事と思います。

246x204px インタビュー風景1 

4.【耕作放棄地を耕作地に復活する取り組み】

(女川氏) このシステムは農家の方々が使うだけですので、導入したからと言って、作った野菜が何割か高く売れる訳でもなく、売上が増える訳ではないので、設備投資にしかなりません。そこで、次に不耕作地(耕作放棄地*)をどうにかしようと言う事を考えました。

 実際に今回の東日本震災で、津波被害を受けた農地だけでも約24000ヘクタール*あります。震災から1.5年経過して、復旧した農地は約8300ヘクタール*です。同じ期間に全国で不耕作地になった農地が約12000ヘクタール*に上っています。その現実を踏まえて、この課題を解決する為のビジネスモデルを立ち上げる必要があると考えました。

(聞き手) 東北の被災地で、農地を復旧していると言う中、全国では復旧をはるかに超える面積の耕作放棄地が出来ている事には、矛盾も感じます。高齢化、そして農業経営のあり方そのものに課題があると言えるのかもしれません。もうひとつのビジネスモデルについてもお聞かせ頂けますか?

(女川氏) 年々増え続ける不耕作地をどうにかしたいと考えて、不耕作地を貸し農園にしようと考えました。遠隔から農場が見えるシステムを使えば、どこにいても、いつでも自分の農園の様子を確認できますし、専用のSNSで情報交換もできるようにしています。

 ウィークデーにはメインの仕事をしつつ、休日や祭日などで農地の管理が出来るので、農業に関わる人の裾野を広げることが可能になります。基本的には貸し農園の管理は、農民に任せる仕組みを提供していますが、これが大きな特徴でもあります。

 例えばキュウリは、1日収穫のタイミングをずらすと、ヘチマのように大きくなりますが、これらの情報も毎日、自宅や職場から見て確認する事ができます。このITシステムを利用することで、自分の農園と言う意識が、持てるようになるだけでなく、水やりや草取りのタイミングを、SNSを使って管理人(農民)に、直接お願いする事もできます。

(聞き手) 耕作放棄地を耕作地にする為の新しい取り組みですね。

(女川氏) これまでの農家は、農作物を作り、売りに出し、販売して儲けると言うフロービジネス*でした。しかし、貸し農園にする事で、農作物の良し悪しに関わらず、農家に家賃収入が入ってくるのです。不耕作地を耕作地に変えると同時に、これは、農家の経営が、フロービジネスからストックビジネス*に変わるインパクトがある事なのです。

 更に、これまで家庭菜園をやりたかった人達にとっても、農民が管理人になってくれる事で、きちんとした農産物が出来て、収穫の時だけ自分で採りに行く事も実現できます。

(聞き手) 農園を借りるにはどのくらいの費用がかかるのでしょうか? 

(女川氏) 場所にもよりますが、1区画1.3~1.4坪の広さで月額@2000円~3500円です。

  • 中心地からの距離に応じて値段は決めています。
  • 仙台駅から車で1時間以内の距離(設備に応じて)      月額@3000円~3500円
  • 仙台駅から車で1時間~1時間半まで(鹿島台・松島など)  月額@2500円
  • 上記以上の距離                           月額@2000円

5.【グリーン・ツーリズムを貸し農園で実現 】

(聞き手) 貸し農園は具体的には、どのような方々からニーズがあるのですか?

(女川氏) 中心地から近く便利な場所は、一般の方からの需要が多く、遠くはレストラン等からの需要があります。こだわりの農作物を管理人に収穫してもらって、採れたものをそのまま持って行く事も出来ます。

 レストランなどは区画ではなく、1棟借りるケースもありますので、ほとんど契約栽培と言っても良いかもしれません。レストランではタブレットやipadを使って、農園の様子をほぼリアルタイムにお客様にご案内できますし、そこで採れた野菜を提供すると言う付加価値も提供できるのです。

 一般の方は1区画~2区画を借りている人が多く、お子様がいれば食育を兼ねて家庭菜園をやりたいと言うご家族、それから野菜ソムリエの方々からも人気です。

 更にもうひとつの特徴として、貸し農園ではありますが、私たちは「農園利用方式*」を採用しています。あくまで借主にとっては、農業の体験をすることがメインなのです。この農地の主たる耕作者は農民ですので、採れた農作物も農民の名前で、JAなどに販売する事も可能です。

 水菜の場合、スーパーで売っているような束が、1区画で80束ほど収穫できますので、食べきれないほどの農作物が、収穫できる時があります。そんな時、1ケース20束だけ自分で食べて、残りは売ることが出来ます。その場合は、手数料だけ引いて、残りの利益はユーザーさん(借主)にお返ししますので、儲かる月もあります。

 またスーパーに行った時、野菜に生産者番号が書かれていますが、もしかしたら自分の畑で採れた野菜に、出会えるかもしれないと言う楽しみもあります。産直売所に、自分の畑で採れた野菜が売られていたら、facebookで紹介することもできますので、家庭菜園もITがあることで、より楽しめると思います。

(聞き手) 週末に余暇を兼ねて家庭菜園を楽しむ事で、手軽にグリーン・ツーリズムができますね。ところで、農園の映像はどのような仕組みで提供されているのでしょうか?

(女川氏) 植物が対象なので、WEBカメラで15分~30分に1枚撮影した静止画をクラウド上の、ドロップボックス*にUPして、ホームサーバーで一番近い時間の画像を引っ張ってきて、見える仕組みにしています。動画にするとネットに付加をかけるだけなので、静止画でリアルタイムに近い時間間隔の画像を共有しています。SNSでは、映像のほかにも、温度と照度のデータを提供しており、管理者とユーザーが共有することができます。

246x206px COCOLIN(仙台市)でのインタビュー 

6.【農家のお手伝い・補助としてのITの役割】

(女川氏) このSNSは東北スマートアグリカルチャー研究会*(T-SAL)のメンバーが運営しています。これは震災のあと、仙台のIT企業の仕事が激減した事に危機感を感じて、東北大や東北学院大、東北のIT企業が連携して、復興と雇用創出の為に、東北らしいソリューションを作らなければならない!と立ち上げられた団体で、私は現在、理事を務めています。

 震災に関わらず、東北のビジネススタイルの課題は、東京の下請けの仕事が多い事でした。もともとは東北らしいソリューション、すなわち農業向けIT、1次産業向けITを推進する為に作られたコンソーシアムで、設立当時から私の想いと目指す方向が同じでした。

 大企業が高い費用をかけて農業用クラウドを立ち上げたとしても、1束60円~70円で生計を立てている農家では、使えない事は東北の人たちは、みんな知っています。復興予算で大企業と地元の農家が大規模農場経営を、地域活性化の為に推進する取り組みも重要な取り組みだと考えますが、この研究会ではあまねく農家が使えるITシステムを作ることが目的でした。ITで農業のすべてを賄うのではなく、あくまで農家のお手伝いをできれば良いと言うシステム作りです。

(聞き手) 女川さんの作られたシステムのコンセプトと同じですね。この研究会には立ち上げから関わられたのでしょうか?

(女川氏) この研究会が立ち上がる少し前から、ビニールハウスに入れるITシステムを安価に作りたくて、母校の東北学院大学工学部の岩本准教授を紹介していただき、大学の研究テーマとして農業用ITシステムの開発をお願いする事になりました。出来上がったシステムは、最終的には、どこかのメーカーがきちんと形にして売ってくれれば良いと思っていました。

 時期を同じくして、東北大とトライポッドワークス株式会社、みやぎモバイルビジネス研究会、株式会社SJCなども、農地の状態をセンサーでモニタリングするシステムを開発するためにコンソーシアムを立ち上げようと考えていました。

 お互いの事情を知らないまま同じ目的の開発が進んでいることを知った、一般社団法人MAKOTOで代表理事を務める竹井氏が、このままでは東北の地から競合する2つの同じようなシステムが生まれるのでは?と心配して、東北大学サイドで研究開発を推進していた、菊池先生と私を引き合わせて下さいました。私たちは、システムを売るメーカー同士のような競合関係ではないので、同じ目標を達成する為に、一緒に研究する事になりました。

 そして震災直後の2011年9月に立ち上がったのが、東北スマートアグリカルチャー研究会です。この時、既に私は市販のカメラを使って上述のモニタリングシステムを作っていました。そのシステムを商品やサービスとして展開できるIT企業や半導体企業もこの研究会に参画していますので、産学農でのコラボレーションです。

7.【農業とITの橋渡しでIT農業を実現】

(聞き手) コンソーシアムのメンバーに、農家の女川さんが入っていることは、とても重要ですね。現場のニーズ、そしてITの理解があることで、本当に必要なものは何で、不要なものが何なのかを明確に出来るのではないでしょうか?

(女川氏) これまでもIT企業と農家の人達が話し合って、様々なシステムを作られていますが、出来上がると使えないものになっていると言うケースが多々見られます。それは、お互いの言っている事が理解できなかった事が原因ではないでしょうか。

 例えば、IT企業から「湿度は大事ですか?」と質問されると、農家の方々は「湿度も大事だ」と答えますが、そもそも農家の人達に取って必要な湿度とは、何なのでしょうか?

 湿度とは温度に対する、大気中に含まれる水蒸気の量や割合のことですが、同じ水分量でも温度が上がれば湿度が下がるし、温度が下がれば湿度は上がります。だから朝は結露するし、昼間は乾いていると言うことなのですが、農家にとって大事な事は、実は湿度ではなく、水分量だと言う事にお互いが、気づいていないケースがあります。

 湿度は朝晩の気温と、反比例する数字しか出て来ません。毎朝、土の色や乾き具合で水分を見ている農家の人達は、それが湿度でわかるのだと勘違いしているのです。

 湿度が大事だと聞いたIT企業は、湿度センサーを導入することになります。そして1ヶ月後に湿度のデータが、農家に届けられるのですが、それを見ても読み解くことができず、感じることもできないので、「使えない」と、なるのです。このように、開発者と農民の認識のずれや言葉・感覚の差が起きないように、両者に説明することが、私の役割だと思っています。

(聞き手) 女川さんの作られたシステムは、WEBカメラが大きな特徴ですが、農家の方々のニーズは数値によるデータではなく、「見たい」と言うことだったのでしょうか?

(女川氏) 私達にとって最も大事な事は地面の様子や、ハウスの結露の様子を見る事で、補助的に温度や日照のデータを見たいのです。温度センサーを付けるのではなく、温度計をWEBカメラで映して、温度を見られるようにしています。カメラも市販のものなので1万円以内で購入しました。

 また、これらの情報をアンドロイドスティックで動かせるようにしようと思っています。最近はHDMI端子のついたテレビが、皆さんのご家庭にあるかと思いますが、その入力端子に、アンドロイドスティックを挿入すれば、あとはWi-Fi環境だけ整えておけば、テレビの入力切り替えボタンを何回か押すだけで、自分の農場が映るチャンネルが、テレビに出てくるのです。

 パソコンやスマホ、携帯を使いこなすことが難しい高齢者も、これならテレビを使っている感覚で、簡単に使いこなせると考えています。

 アンドロイドスティックも1本1万~1.5万で、とても安価ですし、ネットワーク費用もインターネット回線を引いていたら、無線LANのルータか、hubを置けば、それだけでつなげられますので、システムにかかる費用はとても安価です。システム構築の初期投資は、カメラの台数にもよりますが、約2万から可能です。

304x187px 農園の様子をWEBカメラで確認 

(聞き手) 市販のITツールなので、本当に安価なシステムですね。これならIT農業が実現して、新しい農業が生まれてくるのかもしれないですね。このシステムの導入は始まっていますか?

(女川氏) さきほどお話した、蔵王の麓や石巻の農家など、職住分離の農地に入り始めています。これは、農家の方々が自分の農場管理の為に使用されていますが、私のように貸し農園を展開する為に、SNSで応用して利用する方法もあります。

 私は、ITシステムを使用する農家のひとりとして、貸し農園の展開を4月から開始していますが、現在、借りている方が、33ユーザーいらっしゃいます。この中でSNSに参加しているのは、19人いらっしゃいます。貸し農園を利用したい人は多く、facebookと口コミで告知をするだけで、直ぐに集まるのが現状です。

 現在使用中のSNSは研究会の参画メンバー、株式会社アイエスビー東北がベータ版を構築して提供していて、今後はビジネス連携も視野に入れてモデル作りを行っています。今回のビジネスプラン発表会に出たことで、ソフト開発会社からの問い合わせを多く頂きましたが、IT農家が加速して農業が活性化する一助になればと思います。

(聞き手) 家庭菜園は人気ですが、これまで農家の人達が参入して来なかった分野への参入ですね。

(女川氏) 「農地法3条」によって、謄本上、その土地が田・畑であれば、農民同士でなければ、貸し借りができません。貸し農園でも、普通は農民でなければ借りられません。「貸し農園法」では一端、自治体が借り上げて、再度割り当てして貸し出す市民農園法があります。行政が農園を管理・運営する量には限界があるので、供給が少なく、需要が多いと言う側面があります。私は農民なので、耕作放棄地の農地を借りることが出来ますし、一般の方々に貸せるよう、「農園利用方式」を利用しているので、一般の方への貸し農園ビジネスが可能なのです。

 2011年初頭、農家になりたいと思って、就農研修を受け、研修プログラムの受け入れ先だった農業生産法人ダイアファームの阿部社長から、最初に200坪を借りて、ビニールハウスを立てた事から、農業をスタートしました。今では鹿島台で2000坪の農場を運用しています。

 現在は目についた耕作放棄地や休耕地を借りられるよう交渉中で、この7月末には倍の面積の4000坪にする予定です。管理人が1人で最大、3000坪の運営を行えますので、社員も更に2~3人採用予定です。土地を借りるだけでなく、ビニールハウスを建てる為のコストが、1棟100坪で約450万かかりますので、この経費も原価償却で節税できる利回り商品として、投資家を募り、建ててもらっています。

 私の作った野菜を食べて、「これをお客様に食べさせたい」と言ってくれた料理長の言葉が、忘れられません。「Made By Japan」で、作られた農作物を広げるのが私の夢です。

8.【取材後記】

 「ひと束100円以上する野菜を売っているのに、儲からない農業って、何かがおかしい。なぜ?」と、疑問に思ったことがきっかけで、農業に興味を持ち、現状を知ることで、自分なら問題を解決する挑戦が出来るはずだと、農業の世界に飛び込んだ女川社長は、就農研修を受けている中、東日本大震災に遭遇されました。震災後の復興の動きと合間って、IT農業の取り組みは急速に加速していますが、まるで農業の復興・改革は彼にとっての使命でもあるかのようです。

 ビニールハウスには、ガラケーひとつ持込み、農場にある作業場や車でITシステムを使って情報のやりとりをしながら農業を行っている女川社長は、東北の地から全国に向けて農業改革を実現される旗手と言えるのかもしれません。IT農業による、農業経営の改革は、農業の担い手を育成する事にもつながっていくはずです。プランター菜園以上、農業未満を希望する人達の潜在需要を掘り起こす取り組みは、私達にとって農業を身近にし、食への関心を高めるきっかけにもなりそうです。

 全国に耕作放棄地が増えている時代、女川社長のビジネスが広がれば、社会の課題を解決する一歩となるのではないでしょうか。

【参考資料】
*みやぎモバイルビジネス研究会
 http://www.mimos.jp/

*耕作放棄地・・・「耕作放棄地」とは、「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」と定義されている統計上の用語です。

*「津波により流失や冠水等の被害を受けた農地の推定面積」 出展:農林水産省 平成23年3月29日
 http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/sekkei/pdf/110329-02.pdf

*「東日本大震災における津波被災農地の復旧状況と今後の見通しについて」  出展:農林水産省 平成24年4月20日
 http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/bousai/120420.html

*「農地に関する統計 耕地面積及び作付延べ面積」 出展:農林水産省
 http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/10.html

*フロービジネス・・・必要とされたときに、必要なサービスを提供する売り切り型の経営手法

*ストックビジネス・・・蓄積された資産を利用して、継続的に利益を得る経営手法

*農園利用方式・・・ 「農園利用方式」とは、相当数の者を対象として定型的な条件でレクリエーションその他の営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供するものであり、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転を伴わないで当該農作業の用に供するものに限られます。つまり、農地を貸し付けるのではなく、開設者自らの農業経営の一環として農園を設置し、開設者の指導・管理のもとに、多くの農業者以外の方々のレクリエーションなどの目的のため、複数段階の農作業(植え付けと収穫等)を体験させるというものです。

*ドロップボックス・・・Dropbox(ドロップボックス)とは、2008年に正式公開となったオンラインストレージサービス。様々なファイル(写真・動画・文書など)をWeb上に保存し、フォルダごとに任意のメンバーの間で共有ができる。

*東北スマートアグリカルチャー研究会
 http://t-sal.net/

◆平成24年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会のリンク先
 http://www.venture.nict.go.jp/event/bp2012/report
 
◆Japan IT Week2013春 第3回スマートフォン&モバイルEXPONICT出展の展示会でのみやぎモバイルビジネス研究会映像取材の様子
 NetRushTV  http://www.netrush.jp/chiiki20130519.html

next pre up