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株式会社 Eyes,JAPAN  代表取締役  山寺 純 氏  <平成26年度 起業家万博 発表企業>

車輪の再発明!自転車プラットフォームでシェアカルチャーの拡大を目指す

 

1. 初めに
2. 【すべては会津大学での出会いから】
3. 【常に新しい「老舗」であるために】
4. 【東日本大震災をきっかけに生まれたFUKUSHIMA Wheel】
5. 【自転車を走らせて、ビッグデータを集めよう】
6. 【自転車の後輪に広告を表示!?】
7. 【福島で働くメリットとは?】
8. 【ドメインは「nowhere」】
9. 【FUKUSHIMA Wheelの輪を世界へ】
   企業プロフィール

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1. 初めに

 私たち日本人にとって、ごく身近な乗り物・自転車。特に都市部では自転車を見かけない日はありません。「せっかく乗るのなら、あるいは、せっかく目にするのなら、自転車にはもっと面白い機能があってもいいんじゃないか」。この発想から生まれたのが株式会社Eyes,JAPANのFUKUSHIMA Wheel(フクシマ ホイール)です。自転車そのものを1つのプラットフォームにし、都市の移動をもっと面白く、健康的にそして収益性のあるものに変えるというFUKUSHIMA Wheel。具体的にはどのようなサービスなのでしょうか。サービスの内容と今後の展望について同社の山寺純代表取締役に伺いました。
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2. 【すべては会津大学での出会いから】

 山寺さんは1968年福島県会津若松市生まれ。高校卒業後に上京し、カフェの店員、ディズニーランドのキャストなどさまざまな仕事を経験、1993年に地元・会津若松市に開学したばかりの会津大学で事務局の通訳翻訳員の職に就きました。会津大学は、コンピュータサイエンスに特化した日本初の大学として知られ、開学当初から国内外のすぐれた技術者・研究者が集まっていました。
「ここで僕は初めてコンピュータやインターネットに触れ、瞬く間に魅了されました。学内で研究されていたのは、2001年宇宙の旅の著者として知られるアーサー・C・クラークの『Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic(優れたテクノロジーは魔法と区別がつかない)』という言葉どおりの世界。当時はまだコンピュータやインターネットが今ほど一般に普及していない時代で、僕もほとんど触れたことがなかっただけに、そのテクノロジーのすごさに頭を打たれるような衝撃を受けました」。さらに山寺さんに影響を与えたのは、コンピュータサイエンスに魅了されて全国から集まってきた優秀な学生たちとの出会いでした。95年には意気投合した仲間と一緒にEyes,JAPANを設立、以来20年間、最先端のIT技術を武器に、ネットワーク管理、Webサイト・システム開発、保守管理、セキュリティからアートワーク、イベント企画まで実に様々なサービスを生み出してきました。

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3. 【常に新しい「老舗」であるために】

 「この20年間、いろいろなことをやってきましたが、僕たちが大切にしているのは常に“新しいもの”にチャレンジする気持ち。ITベンチャーと言っても創業から20年も経つと日本ではすでに老舗です。そのポジションに慣れきってしまわないように、常に新しい技術を学び、いつも何か新しい価値をクライアントに提供できる組織でありたいと思っています」。
そのためにEyes,JAPANのメンバーが心がけているのは「Cutting Edge(先進性)」「Diversity(多様性)」「Agile(俊敏性)」。このうち山寺さんが特に意識しているのが、Diversity(多様性)だといいます。「Eyes,JAPANのメンバーは国籍も専門も経歴もバラバラ。そのバラバラな個性が絡み合い影響を与え合うことによって、単独ではちょっと思いつかないような斬新なアイディアやクリエイティビティが生まれるのです」。そして3つめに掲げた「Agile(俊敏性)」こそが、先進性や多様性を活かすカギだといいます。「Eyes,JAPANのような小さな会社の強みは、大企業に比べて意思決定が早く、小回りがきくこと。可能性があるなら、とりあえずTryする。その結果がErrorであったとしても、すぐに立ち上がって体制を整え、もう一度Tryします。一見遠回りのようですが、実はこの俊敏なTry&Errorの繰り返しこそが成長の糧であり、結果的に目標達成につながる一番の近道でもあるのです」。
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4. 【東日本大震災をきっかけに生まれたFUKUSHIMA Wheel】

 こうして順調に成長を続けていたEyes,JAPANに大きな転機が訪れます。2011年3月の東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所の事故です。「会津若松は原発から100kmほど離れていますし、業種的に風評被害などもないので、会社の経営的に大きな被害はなかったのですが、あの震災と事故をきっかけに僕自身の死生観が大きく変わりました。人はいつ死ぬかわからない、人生は短い。一度きりの人生を悔いのないように生きようと強く心に決めました」。
そんな山寺さんが震災後すぐに動き出したのは、故郷であり会社の本拠地でもある会津若松のためのサービス開発でした。「会津若松の主な産業は観光業。ですが震災後は観光客が激減、町から活気が消えました。実際、震災後しばらくは会津若松でも放射線量が高い時期が続いたのです。毎日ニュースで今日の放射線量は〇ミリシーベルトでした、と伝えていましたし、自分たちで線量を測る人も多かったですね。でも放射線量を測るなんてちっとも楽しい作業じゃありません。なんとかできないものかと考えていた時にふと目についたのが自転車。自転車に乗るのは楽しい⇒自転車に乗りながら放射線量を測れたら面白いんじゃないか?と思いつきました。それで作り始めたのがFUKUSHIMA Wheelなんです」。

 

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5. 【自転車を走らせて、ビッグデータを集めよう】

 FUKUSHIMA Wheelで測定できるのは放射線量だけではありません。自転車のフレーム部分に取り付けられたセンサーボックス内には放射線センサー、窒素化合物センサー、温度・湿度センサー、一酸化炭素センサー等を搭載。センサーが測定した各種環境データはスマートフォン経由でクラウド上に集約され、最終的にはビッグデータとして各分野で活用されます。「福島には福島の、東京には東京の、そしてニューヨークにはニューヨークの問題がデータに表れます。たとえば東京やニューヨークなら渋滞や騒音がデータとして現れるでしょうし、北京なら大気汚染の状況がよく表れるはず。それを企業や個人に活用してもらうことができれば、それぞれの街はもっと安全で暮らしやすい街になるのではないでしょうか」。まさに自転車のイノベーション。約200年の自転車の歴史を塗り替える画期的なサービスといっても過言ではありません。

 

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6. 【自転車の後輪に広告を表示!?】

 そしてFUKUSHIMA Wheelにはもう1つ、大切な役割があります。それは広告媒体としての役割。自転車を漕ぐと後輪部分に取り付けたLEDが点灯、あらかじめアプリで指定しておいた画像や文字が車輪上に浮かび上がります。「自転車を単なる移動手段ではなく、目で見て楽しいものにするためのアイディアです。企業が広告のために活用してもいいし、個人が何かのメッセージやイベントの告知などを表示してもいいですよね。自転車はラストワンマイルモビリティ(ちょっとした移動の手段)なので地域密着型の広告媒体としてすごく期待できると思います」と山寺氏。「最近海外では街中に電動レンタサイクルのステーションが設置されているのをよく見かけるようになりました。このレンタサイクルにFUKUSHIMA Wheelを活用すれば、後輪に表示する広告収入で事業を継続しつつ地域の環境データを収集することができて一石二鳥。おかげさまで多くの企業や自治体の方がFUKUSHIMA Wheelに興味をもってくれていて、すでに幾つかの都市で実際に走って実験を進め、事業化計画が着々と進んでいます」。

 

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7. 【福島で働くメリットとは?】

 Eyes,JAPANの事業フィールドはまさにワールドワイド。山寺さんは、福島だけでなくシリコンバレーや東京、ヨーロッパなど世界を転々としながら仕事をしているそうです。ではなぜ今も本拠地を交通の便の良い首都圏ではなく、あえて福島に置き続けているのでしょうか?「震災直後、放射能の影響を心配してくれる海外の友達から福島を離れたほうがいいと何度も勧められました。今も、そう言われることがあります。でも福島は僕の生まれ故郷。被災地になったからといって、あっさり捨てることはできませんよね(笑)。それに経営者としては、福島に拠点をおくことにもメリットがあるんですよ。それは、優れた人材が集まりやすいこと。普通、日本では僕たちのような地方の企業にとって優秀な人材を確保するのは至難の業です。しかし福島が世界でも有数のリスクを抱えた場所であるからこそ『ここで挑戦したい』と、あえて福島の弊社を目指して国内外から優秀な人材が集まってくれるんですよね」と山寺さん。「それに震災前は海外で『フクシマから来た』と言っても誰も知りませんでしたが、今は、知っている人が増えました。マイナスイメージではあっても、知名度が上がったことは大きなチャンス。マイナスイメージを巻き返せるように頑張りたいですね」。

 

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8. 【ドメインは「nowhere」】

 ただし「拠点が福島にあるからといって、福島に腰を据えた働き方をしているわけではないし、社員に強要しているわけではない」と山寺さんは話します。「僕自身が世界中どこにいても働ける人材でありたいですし、社員にもそうあってほしいと願って、弊社のドメインはnowhereにしています。『nowhere』は、『no where、どこでもない』という意味にも取れますし『now here、今ここにいるよ』という意味にもとれます。これからも僕たちはITの力を駆使して、場所にとらわれずに働いていきます。そして近い将来、この働き方が子どもたちのロールモデルになれば嬉しいですね。都会に固執せずに働く人を増やすことが、これからの日本には絶対に必要だと思うからです」。
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9. 【FUKUSHIMA Wheelの輪を世界へ】

 山寺さんが次のビッグチャンスとして捉えているのは、2020年開催予定の東京オリンピックです。「東京オリンピックまでにFUKUSHIMA Wheelを新しいインフラとして東京で稼働させるのが目標。オリンピック観戦で東京に来た人にFUKUSHIMA Wheelを体感してもらい、その素晴らしさを自国にSNSや口コミで広めてくれたら、きっと面白い化学反応が起こると思うんですよね。震災や原発の事故で全世界に広がってしまったFUKUSHIMAの負のイメージを払拭する大きなチャンスですから、ぜひ実現したいですね。
 もちろんFUKUSHIMA Wheelだけでなく、ITの力で世の中をもっと面白く楽しい場所にするサービスをどんどん打ち出していくのが僕の夢。『Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic(優れたテクノロジーは魔法と区別がつかない)』ことを、もっと多くの人に実感してもらえるよう、これからも挑戦を続けたいと思っています」。

 FUKUSHIMA Wheelを始めとするEyes,JAPANの素敵な『魔法』が、FUKUSHIMAを、日本を、そして世界をどんなふうに変えていくのか、この先の展開が楽しみです。

 

 
 

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◆ 平成26年度 起業家万博  (情報通信ベンチャー・ビジネスプラン発表会)
   開催報告  http://www.venture.nict.go.jp/unpaku2014/report
プレゼン映像  http://www.nict.go.jp/video/banpaku-2014-05.html
 

 
企業プロフィール
 

 
株式会社 Eyes,JAPAN

 
概要

 
1995年9月創業
 
経営理念・使命
"Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic"
(優れたテクノロジーは魔法と区別がつかない) Arthur C. Clarke

  「2001年宇宙の旅」の著者でも知られるArthur C. Clarke の言葉です。
   現在のコンピュータやネットワークの進化、そしてそこで発生している
   新しいデジタル・カルチャーを予言するかの様な言葉です。
   人々に夢を与えたディズニーの様に、
   魔法の様なデジタル・カルチャーを創り出すのがEyes, JAPANの使命です。
  
 
主な業務内容
・各種システム、アプリ開発
・webサイト企画制作
・ネットワーク構築、運用、保守管理
・企画立案、戦略、マネジメント
 

 

 
窓口・情報
 

 
URL:http://www.nowhere.co.jp
 

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