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株式会社GClue 代表取締役  佐々木 陽 氏 ~平成24年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会 発表企業~

124x138px 佐々木氏

<氏名> 佐々木 陽氏
<社名> 株式会社GClue.
<役職> 代表取締役
<設立> 2001年8月
<URL> http://www.gclue.com

 GClueは2000年4月に会津大学生の有志により携帯Java研究開発集団として結成され、その後、2001年8月に株式会社GClueとして設立。スマートフォン(モバイル)+αのICT技術に特化した開発を行っています。今後、益々普及が見込まれるスマートフォンをはじめとするモバイル端末の開発ビジネスのあり方など、新たなビジネスモデルを提案しています。最近ではソフトウェア開発に加えて、「オープンソースハードウェア」の概念を取り入れ、パソコンと電子回路基板や工作機械をつなげる事が可能な環境、Fab Lab 設備(FaBo)を自社に持ち、3Dプリンターを使ってのハードウェア作りやアプリ+ハードウェア開発の研修などICT人材の育成も行っています。

1.初めに

 第15回(平成24年度)NICT情報通信ベンチャービジネスプラン発表会、大賞に輝いた株式会社GClue、代表取締役 佐々木陽さんにお話しをお聞きしました。
 GClueはiPhone、Android向けアプリ開発の第一線で活躍しながら、常に新しいビジネスに挑戦し続けています。福島県会津若松市からの推薦を受けて、今回の発表会に出場。オープンソースソフトウェアと同じ形態で設計されるハードウェア作りを目指す、オープンソースハードウェアのプラットフォームビジネスで、新たな時代のモノ作りに挑戦しています。
 日本のモノ作りに輝きを取り戻すムーブメントになりそうなモデルを推進する、注目の企業の取り組みをご紹介します。

2.【東日本大震災で芽生えたモノ作りへの想い】

(聞き手) 御社の手がけるビジネスプラン「iOS連携ハードプラットフォーム」は、平成24年度(第15回)情報通信ベンチャービジネスプラン発表会で大賞を受賞されました。昨年に続いて会津若松市からの推薦での大賞です。大変おめでとうございます。起業なさって約12年とお聞きしていますが、今回応募されたビジネスプランは新規性も審査員の方々から高く評価されたようですが、どのようなきっかけでアイデアが生まれたのかお聞きしたいと思います。(佐々木氏)GClueは携帯電話向けのアプリ開発で立ち上げ、起業してこの12年で3度の事業内容見直しを行い、最近では主にiPhoneとAndroid向けのアプリ開発を行っています。今回のFab(ハードウェア作り)は、まったく新たな挑戦で、もともとは私の趣味から始まったことなんです。(聞き手) 趣味で始めたことが、社内ベンチャーで新たなビジネスプランを生み出すきっかけになったのですか?Fabは、最近流行りのFab=Fabrication Labのことですね。(佐々木氏) はい、今回の応募のきっかけは、福島の住人として、東日本大震災後に放射線の測定をするためのガイガーカウンターが、当時は高価でなかなか手に入らなかったので、自分の手で作りたいと思ったことが始まりでした。この2年間は、土日や平日の夜など休みの時間を使って、趣味でハードウェア作りを続けてきました。
 仕事上でも、大学生にiPhoneやAndroidのソフトウェアを教育していく中で、スマートフォンにつながるハードウェアについても教えてほしいと要望があり、教える機会が増えていきました。例えばいくつかの回路を教えると最後はロボットができるかもしれない・・・など、ハードウェアをモジュール化し知恵を蓄積して、教育に必要な教材を作る事にもつながっていきました。

254x62px GClue ロゴ

3.【福島に集う人々との出会い】

  (聞き手) この2年は、趣味と仕事の双方で、ハードウェア作りにウェイトが高まっていくことになったのですね。ガイガーカウンターは実際には作られたのですか?(佐々木氏) はい、最初は見様見真似で作りました。当初は人の作ったガイガーカウンターの外見を約1週間、ただじっと見つめていました。そうすると、ここをつなげると、出来るかもしれない・・・と、作り方が分かってきたので、なんとか動くものを作ってみました。生まれて始めて作ったハードでしたが、原始的な電子回路で作れるので入門としては、とても良かったです。
 震災後の2011年夏に開催されていた、ワイヤレスジャパンの展示会で、自社のAndroidアプリの展示と共に、自分の作ったガイガーカウンターもAndroidにつながるモノとして出展しました。そこでは他団体も、同様にガイガーカウンターを出展する為に、全国から多くの人が集まっていました。
 この方々は日本中から集まったハードウェア作りが好きで得意な人達でした。たとえば、四国から来ていた出展者の方に注目して声をかけたら、ボランティアで福島に来てくれることになりました。この方々との勉強会が、私にとっては本格的にハードウェアを作るきっかけになりました。
 もともと中学生の頃から電子回路には興味があったのですが、当時は仙台に住んでいて、電子回路を購入できるお店が近所に無かったと言う時代だったのでモノ(部品)が無いと言う事と、教えてくれる人がいなかった事から、電子回路を使ったモノづくりを断念していたと言う背景があります。その頃は、どうすれば電子回路の勉強ができるのか?と、考えていました。結果として、現在はソフトウェアの会社を経営していますが、「何かを作りたい!」と言う思いは強く、ネットビジネスの方が、ハードビジネスよりも参入障壁が低かった事から、自分だけでなく、同年代の若い人たちの多くがネットビジネスに進んでいったように思います。

166x150px インタビュー風景

4.【ソフトとハードの融合で新たなモノ作りにチャレンジ】

(聞き手) 佐々木さんのようにネットビジネスの世界で活躍中の若い方々にとっても、ハードウェア作りが、身近になってきていると言う事は、ソフトとハードを融合した「モノ作り」ビジネスが、新たなトレンドになりつつあると言うことでしょうか?(佐々木氏)ネットによって、電子回路などを勉強する下地が出来ていますので、ハードウェア作りもソフトウェア作り同様にできるようになっています。もともとハードウェアを作りたかった人たちが、このジャンルに戻ってきている機運を今、感じています。それを先んじてFab Labを社内に作り、たとえば3Dプリンターやレーザーカッターを使って会津大学や宇都宮大学などの大学生向けの研修や、スマホとモノ作りの融合にチャレンジを始めています。(聞き手)大学生の反響はいかがですか?(佐々木氏)大学生はソフトをやりたいとか、ハードをやりたいとかでは無くて、「何かを作りたい!」と言う思いが感じられます。これまでは、ハードの部品などの入手が困難だった為に、ソフトを作る事でしか自分を表現する手段が無かったので、結果として作る物もソフト中心だったのですが、大学院生にトライアルでハードを教えたら、知識が無い状況の中でも、課題を出すと、すぐに“動くもの”=ハードを作ってきたのでとても驚きました。(聞き手) 「何かを作りたい!」と言う思いは佐々木さんの若い頃も今の学生も同じですね。若い学生のみなさんの手で新たなモノが生み出されていくのを目の当たりにされてどのようにお感じになりましたか?(佐々木氏)ハードには人をひきつける”何か”が、あると改めて思います。本能的に私達は仮想の世界だけでなく、物理的に見えるモノを動かしたいと言う欲求があると思うのです。学生への授業を通して、その思いを強く感じました。以前は、ハードはハード、ソフトはソフトと分かれていた時代がありましたが、ネットで様々なものがつながる今、新たな進化が起きる可能性があります。ハードもインターネットとつながらないと、ビジネスにならないのではないかとさえ感じています。そして、そこはまだ誰もやっていない領域です。だからこそ、ビジネスチャンスがあると思うのです。(聞き手) 今回受賞された「iOS連携ハードプラットフォーム」も、ハードがソフトにつながることで新たな価値を創出するためのプラットフォームと言えるのかもしれないですね。

5.【オープンソースハードのプラットフォームビジネス 】

(佐々木氏) ネットとつながってはじめて価値を生むハードは、これから多くの人が作るようになるだろうと感じていますので、このプラットフォーム作りを現在、加速しています。ハードは現在まであらゆる定義が出し尽くされていて、新しいモノを作ることは非常に難しい状況です。しかし、ネットとつながる事で、これまでハードを作った事の無い人達にもチャンスが生まれるのです。
 誰にでもハードを作れる開発環境を提供することで、柔軟な発想がどんどん生まれ、色々な人達が新たな発想で自分の欲しいと思うハードの定義をし始め、バリエーションが増えてくると考えています。そして最終的には大多数の中から質の高いものが出てくるはずです。だからこそ、みんなが簡単にハードを試作できる環境のプラットフォームを作りたいと思っています。今年の秋までには電子基板を複数用意して提供する準備もしています。
これまで長年、携帯ビジネスでも、ソフトを作るプラットフォームビジネスを手がけてきましたが、それをハードウェア作りにシフトしたいと思っています。インターネットビジネスのブレイクした理由のひとつは、「結果主導型開発」だった点にあると思っています。
とりあえず動くソフトを作ってみて、そのあとで価値を高めて新しいソフトを作っていくのですが、それが進化の鍵だったと思います。その手法をハードウェアのプラットフォームでも取り入れたいと思っています。
(聞き手) 「オープンソース」でハードを作れるICT環境とリアルの環境を提供したいと考えるようになったと言うことでしょうか?(佐々木氏) はい、ちょうどその頃、海外でも「オープンソースハードウェア」と言う言葉がブームになり始めた頃でした。ソフトもオープンソース化することで、その世界が大きく変化しましたが、ハードの世界でも、今まさに国籍を超えて知の共有が進みつつあり、ハード作りに大きな変革の波が起きています。ただ、まだ新しい概念なので、現段階においてもソフトとハードを融合して作ったモノは、世界で始めて作られたモノであったり、誰もまだ作ったことの無いモノであるケースが多く、はじめて作ったモノが、周りからも高く評価されるので、次のモノ作りのモチベーションにもつながると言う、好循環が生まれています。
 もともとソフトの場合もOS・ミドルウェア・アプリケーションを作る人など、様々なレイヤーに分かれていますが、ハードもオープンソースで回路が公開されていますし、ハードは共通言語なので、どちらのレイヤーにも行き来が出来る世界が、グローバルで実現できます。イタリアから生まれたArduino*は、ハード作りに大きな変革をもたらし、世界中ですでに100万人ユーザーがいると言われています。例えば私たちはその上に載せると、すぐにスマホとつながると言うレイヤーの基板を私達のプラットフォームで提供したいと思っています。
 
(聞き手) 次世代の世界NO.1のモノが日本から生まれるかもしれないですね!

252x263px FaBo製品

6.【FaBo Labは知的好奇心を形にする場所】

(聞き手)具体的なiOS連携ハードプラットフォームのビジネスモデルを教えてください。(佐々木氏)iOS連携ハードプラットフォームは、FabricationとBone(骨格)を足した造語、「FaBo」と言う愛称を付けました。まずは玩具の基板のキットやロボットのキット等を販売して、色々な人にモノ作り体験をしてもらいたいと考えています。ハードを作り始めると、自分だけのものを作りたくなりますので、最終的にはクリエーターとして活躍できるよう、玩具業界への販路の紹介も含めた環境も、すべて提供したいと思っています。実はアメリカや中国でもインターネットを中心としたハード作りの環境を提供する動きは、急速に増えており、アメリカではFabは現政権の施策として1000箇所にFab施設を設置するとも言われています。
 今回のビジネスモデルでは、「オープンソースおもちゃ」をひとつのコンセプトモデルとして、スマホにおもちゃをつなげて、お父さんが我が子におもちゃを改造して作ってあげることをイメージしています。E-Commerce+Communityで、すべての人が持っている知的好奇心を形にし、ビジネスにするプラットフォームでありたいと思っています。
 オープンソースにすることで、コミュニティへの参加を促したいと思います。私達の持っている情報はオープンソースなので、誰でもアクセスできますし、複製もできます。同じビジネスをしてもOKです。ただし、すべてオープンなので、すべての情報は私たちにも入ってきます。誰が何に挑戦しようとしているのかと言う情報が入ってくると、真っ先にビジネスの方向性も見えてきます。具体的に言うと、私達の提供するプラットフォームの中のソースコードには誰でもアクセスできるので、そのソースコードを使って、多くの人が様々なアイデアでソースコードを改良してハードを作ると、その改良されたコードもオープンに入ってくるのです。
 プラットフォームそのものは収益にはなりにくいのですが、プラットフォームを運営することで、私たちは新しい文化を作りたいと思っています。そしてそれが最終的にビジネスになると信じています。

7.【モノ作りに再び輝きを!】

(聞き手)ターゲットと今後の展開について聞かせていただけますか?(佐々木氏) 英語をベースに世界をターゲットにしています。現在はコードだけ公開していますが、このコード情報で世界中の人とコラボレーションできるのです。世界から日本人のモノ作り力は注目されていますので、私達の提供するプラットフォームで、世界標準を作りたいですし、優秀な日本人エンジニアにどんどん参加してほしいと思っています。2013年秋にはプラットフォームをオープンしたいと思っています。現在は、Github*にソースコードからハードウェアの構成まで公開しています。最終商品にする際は、これら情報は自社で公開の予定です。(聞き手)今回、ビジネスプラン発表会大賞を受賞されたことで、どのような成果がありましたか?(佐々木氏)これまで以上に地元大学との連携が深まり、課外授業でFab Labを教材として利用したいとご要望を頂き、モノとソフトの融合をテーマにした研究に使って頂くようになりました。また、例えば人材派遣会社からは、今回の受賞をきっかけとして、教育用に大人と子供のおもちゃ教室で、今回のプラットフォームを使いたいとご要望を頂きました。更に第3回スマートフォン&モバイルEXPOの展示会に出展させていただいた事で、他にもいくつかの企業から使いたいとお問い合わせをいただき、NHKの海外版などメディアでも取り上げてもらえたことは大きな反響でPR効果にもつながったと思っています。そして何より、すでに12年経つと社内ではベンチャースピリッツが薄れつつあったのですが、新しい事に取り組む空気が社員にも受け入れられるようになった事が大きいです。(聞き手)これからの成長戦略を考える時、日本のモノ作りに輝きを取り戻す為にも、国境を超えた新たな発想・枠組みでのモノ作りは、大変注目しています。私達の固定概念を覆す、どんな魅力的なハードが生まれて広がるのか、またそれらハードによって私達の生活がどのように変わるのか、楽しみにしています。

383x218px わかさぎ釣りロボット

8.【取材後記】

 社名の「GClue」はGet Clueの略で、「手がかりをつかむ、情報を集める」と言う意味だそうです。今回のオープンハードプラットフォームビジネスもまさに、情報の集まる中枢機能を実現する手段のようにも思えます。展示会で、講演を終えた直後にお話をお聞きしましたが、疲れも見せず熱く語って下さいました。そしてその目は、中国やアメリカの最新の動きを、見据えていました。中学時代からパソコン通信に夢中になり、1994年の大学時代にはWIDEプロジェクト*に「デジタル美術館を作るアイデア」で応募して選ばれ、自宅に当時数百万もする光ファイバーをひいて、1年間、インターネットに明け暮れていたと言う佐々木社長は、今回お話を伺っていても、とても自由な空気に溢れていました。 電子部品やパーツも、例えばAliExpress*を使えばonlineで簡単に発注・購入できるので、地域間格差が無くなり、誰もが等しくチャンスを活かせる時代だと語ってくれました。会津発ICTベンチャーが日本のモノ作りに光を取り戻してくれる日も近いのかもしれません。
 そして佐々木社長にとって今回、大きな転機となったのが、東日本大震災であったことは、忘れてならないポイントではないでしょうか。眠っていた何かを呼び覚ますきっかけは、大きく心が動く経験から生まれるのではないかと感じました。
【参考資料】
*Fab・・・Fabrication 製造・組み立ての場所
*Arduino・・・初心者でも簡単に扱えるマイコンボード(組み込み用の基板)
*Github・・・オープンソースプロジェクト向けに、ソースコードなどを公開する拠点
*WIDEプロジェクト http://www.wide.ad.jp/index-j.html
*AliExpress  電子部品やパーツが購入できるonlineサイト http://ja.aliexpress.com/
◆平成24年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会のリンク先
http://www.venture.nict.go.jp/event/bp2012/report
 

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