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ピーエフシー株式会社  代表取締役  松田 啓二 氏 〜平成23年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会 発表企業〜

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<氏名> 松田 啓二氏

<社名> ピーエフシー株式会社

<役職> 代表取締役

<設立> 1996年8月

<資本金> 1,400万円
<URL> http://www.pfc.co.jp/

 ピーエフシー株式会社は、業務システムの開発を通して「人」の役に立つIT、WEBシステムの開発を通して「人」を自由にするIT、情報発信事業を通して「人」を楽しくするIT、そして音声認識事業を通して「人」を助けるITを業務の柱にし、いかなる状況にあっても、「止まることのないコンピューターシステム」の提供を続けています。 
日本の救助現場での救命作業時間を短縮する「クラウド救命支援システム」を提供することで社会に貢献します。

1.初めに

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第14回(平成23年度)NICT情報通信ベンチャービジネスプラン発表会で、OpenLab賞 (NTTコミュニケーションズ株式会社) を受賞した、ピーエフシー株式会社、代表取締役 松田 啓二さん、専務取締役 村田 憲隆さんにお話しをお聞きしました。
「クラウド救命支援システム (CEMS *) の国内・海外展開」をテーマに、救命救急の現場で患者データを効率よく記録して病院に配信し、受け入れ病院を素早く決め、収容時間を短縮するシステムを開発しています。重傷患者の救命率の向上と救急隊員の業務効率アップに貢献することが大きく期待されています。

2.【いのちを救うシステムが生まれた理由】

(聞き手)いのちを救う、救急救命の現場のICT化に着目された理由についてお聞きかせ頂けますか?

(松田氏)実は、妻が自宅で倒れ、救急車で運ばれましたが、残念ながら助かりませんでした。もう少し早く救命措置が出来ていたら助かったかもしれません。少しでも早く救命する為の仕組みについて、考え始めた事がきっかけです。弊社では、業務システムの開発を通して「人」の役に立つIT、WEBシステムの開発を通して「人」を自由にするIT、情報発信事業を通して「人」を楽しくするIT、そして音声認識事業を通して「人」を助けるITを業務の柱にしており、いかなる状況にあっても、「止まることのないコンピューターシステム」の提供を続けています。このクラウド救命支援システム (CEMS) は、音声認識事業の中核として、これまで村田専務を中心に開発を続けています。

(村田氏) ピーエフシーに入社する少し前から、千葉県市原市消防局様と別のシステムでしたが仕事のお付き合いがあり、その際、救急隊員の方々に仕事の状況をヒアリングさせて頂きました。すると救急車の中では、救急患者のデータを手書きでログブックに記録して、病院到着時に医師にそのコピーを手渡し、各自の所属する消防署に帰って、PCに再入力しているとの事でした。千葉県市原市消防局だけでも、年間12,000件、全国で年間、約500万件の膨大なデータとなっており、その中で入院を必要とする重傷患者は約半数に上ります。救急車の中では重篤な患者さんの手当てをしながら、データを手書きで記録していると言う実態に驚きました。そこをなんとかIT化して隊員の皆さんの作業の効率化を図り、患者さんの情報を病院にいち早く伝えることができればと考えたのが、きっかけでした。

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3.【クラウド救命支援システム開発が実現できるまで】

 (聞き手) 患者さんのログブックのデータについて個人情報を削除した上で、現場の管理状況を共有してもらえたのは、消防局の皆さんとの信頼関係があったからではないでしょうか。救急車の車内は、ただでさえ狭く、患者さんを搬送する時は修羅場のような状況かと思いますが、その中にパソコンを導入するのは難しくなかったのでしょうか?

(村田氏) はい、ノートPCを救急車に持ち込む企画が他社にありましたが、救急車が揺れるとハードディスクが飛んでしまう状況でした。 最初はWindowsのメディカル用タブレットを使って、試作しましたが、それでも重さ1.5キロもあり、処理スピードが遅かったので実用になりませんでした。iPadが日本に上陸した頃にピーエフシーに入社し、このプロジェクトに参加させていただき、松田社長の肝いりで、現在のCEMSの開発・事業推進が出来ています。

(聞き手)救命の現場で使えるITの開発は、簡単な事ではないと思います。まずは市原市消防局で実験されたのでしょうか?

(村田氏)はい。業務用のシステムですので、救急隊の皆さんに実際にCEMSをお使い頂きながら、ご意見・評価を頂き、改良して使って頂けるものにしなければなりませんので、入社以来約1年半、現在も隊員の皆さんのご協力を得て実験を続けています。市原市内には救急指定病院だけで7か所ありますが、約500床ほどある大規模な病院、帝京大学ちば総合医療センター様にご協力頂き、救急医療部門でご評価頂いております。

(聞き手)消防署や病院の協力関係を築くには、自治体との連携も重要ですね。

(村田氏)市原市の佐久間市長様も、IT化による安全な街作りを推進されていて、たとえば市原市消防局の司令センターのIT化も非常に進んでいて市内で119番通報があると、リアルタイムで消防と救急の情報は、センターに集約されています。今回のケースは、佐久間市長様のご支援もありまして、市原消防署の救急隊員のご協力を頂けました。また、現段階は開発実験中ですので、2011年末からNICT様には、クラウドサーバ (クラウドテストベッド*) を無料でお貸しいただき、利用させて頂いております。当初は社内で、サーバを立てていましたが、開発内容を外部に公表する事や正式サービス化に向けてセキュリティの問題もあると考えて、研究開発用に利用させて頂いております。正式運用開始後は、上記サーバは利用できなくなりますので、今回のNICT様のビジネスプラン発表会で頂いたOpenLab賞で、半年間NTTコミュニケーションズ様のクラウドサーバをビジネス用に利用させていただける事となりました。あわせてこの賞ではクラウド救命支援システムの商品化までの共同研究開発もさせて頂ける事となり、大変嬉しく感じております。

250x35px ピーエフシー ロゴ

ピーエフシー ロゴ

4.【クラウド救命支援システムCEMSの特徴】

(聞き手)現在も実験中とのことですが、CEMSにはどのような特徴があるのでしょうか?

(松田氏)クラウド救命支援システム(CEMS)は、救急隊員による患者データ記録を電子化し、データをワイヤレスネットワーク経由でクラウドサーバにアップし、救急指定病院のPC端末のブラウザで閲覧するシステムです。重傷患者の救命率の向上と、救急隊員の業務効率の向上に貢献することが期待できます。特徴は、次の通りです。

①患者データを救助現場や救急車の中から、病院・所属本部にネットワークを使ってデータ配信し、救急関係者が患者情報をリアルタイムで共有することにより、患者の受け入れ病院の選定、また処置を素早く的確に行うことを支援し、救命に貢献すること。
②多忙な救急隊員が、患者さんのデータをPCに転記する二度手間を無くすこと。
③患者の処置で忙しく、手が使えない・画面を見られない隊員が音声認識により、患者データをハンズフリー・アイズフリーで入力できること。

CEMS iPad アプリおよびクラウドサーバアプリがまもなく完成します。同時にメーカーと共同で騒音環境下での音声認識の最適化を実現したヘッドセットの開発も進めています。
 
(聞き手)患者さんのデータには、たくさんの項目があるのではないかと思います。開発されたアプリの運用上のポイントについてご紹介頂けますか?
 
(松田氏) まず第1に、時間、意識レベル、呼吸、脈拍、血圧などのたくさんの項目をプルダウンリストによって、直感的に素早く記録することが出来ます。2つめの特徴は、救命活動中もiPadに触れる事なく、音声認識を利用して救命措置状況や観察処置の経過を記録することができます。そして3つめは、消防本部の基幹システムに患者データをパスワード入力すれば、直接アップロードできる様に予定しています。広域災害時の消防隊・救急隊から消防団まで含むモバイル情報伝達手段「緊急参集システム」との連携も可能です。また、CEMSは公益社団法人危機管理協会様の認定も頂きました。

(聞き手)利用者である救急隊員の皆さんは、CEMSをすぐに使いこなすことができるのでしょうか?

(村田氏)直感的に使えるよう、開発していますので、配布しているマニュアルを見れば研修などの必要もなく、翌日から利用できるものになっています。

216x183px  プロジェクターによる説明 P1000157

5.【現場の声を生かしたクラウド救命支援システム】

 (聞き手) 本当に役立つシステムとして、現場が使いこなせることが重要なポイントだと感じます。これまで、ご苦労された点についてもお聞かせ頂けますか?

(松田氏) タブレットは、簡単な入力やウェブ情報検索・閲覧には便利な端末ですが、業務で多くのデータや文章を入力するには、適していません。また、患者の処置で多忙な救急隊員は、タブレットを手に持つことさえ出来ない場合もあります。そこで、弊社が多くのノウハウを持つ音声認識技術を採用したのですが、救急車の室内と言う、大変騒音の多い環境でも精度の高い音声認識を実現することが、最も大きな課題でした。この課題も、長年培ってきたノウハウと、協力メーカーと進めている、専用のワイヤレスヘッドセットの開発によって、まもなくクリアできる運びとなっています。

(聞き手)音声認識合成技術には、カーナビや、携帯など様々な分野で進んでいますが、サイレンの音や走行中の騒音の中でも、必要な情報だけを聞きとれる精度の高い技術が、実用化されるのですね。これからの展開についてもお聞かせ頂けますか?

(松田氏)まずはCEMSを予定通り発売し、日本全国の自治体様にご採用いただき、救命に貢献することが目標です。CEMSアプリを実装したタブレットを消防本部に納品し、クラウドサーバを運営して救急指定病院と消防本部から毎月データ閲覧・PCへのデータ転記サービス料を頂く事業モデルを考えています。また、CEMSの特徴である、タブレットに業務データを素早く、簡単に入力し、データをクラウド経由で関係者に配布するシステム・アーキテクチャを防災・医療・介護など様々なモバイル業務環境向けに展開することにより、社会に貢献して参りたいと思います。

206x141px インタビュー風景 P1000156

6.【全国の救急車にCEMSを展開し、社会に貢献】

(聞き手)全国の救急車は予備を含めて約6000台ありますが、その救急車にCEMSを導入する事で、救命率の向上が期待されます。具体的な事業展開と課題についてもお聞かせ頂けますか?

(松田氏)  9月末を目標にCEMS正式版をリリースし、まずは首都圏の政令指定都市を主とする自治体様に向けて、販売代理店経由で本格的な営業を始めます。ただし、自治体に納品して、クラウドサービスを提供するには、予算付け・前例・消防関係者および病院関係者との調整など多くの課題がありますので、ひとつひとつクリアしていかなければなりません。救急車出動件数は全国で年546万回、搬送患者数498万人と、年々増えており、119番から病院収容までの平均時間は37.4分で年々延びています。CEMSが広がることで、救急患者の病院での治療を一刻も早く開始する一助となればこんな嬉しいことはありません。

(聞き手) 病院内も電子カルテなど電子化が進んでいますが、全国の病院の基幹システムにCEMSの情報がアップロードされれば、たとえば患者さんの状況が救急車の中と同様に病院側も把握できることで、受入れの可否の判断が早くなる事につながり、”たらいまわし”の問題も少なくなっていくのかもしれませんね。これまでの実験は、御社の研究開発費として投資なさってこられたのでしょうか?

(松田氏) はい。これまでの開発費用のほとんどは人件費ですが自社でまかない、作り上げてきました。人の命を助けるシステムですので、すぐに回収するのは難しいかもしれませんが、3年を目途にビジネスとしては、黒字化を目指しています。救急本部と病院から、少しずつ自治体にひろがるよう取り組んで、クラウド使用料は月間で約500万の売上を目指しています。利用者数としては、まずは全国の救急隊 (約1万隊・・・約30,000人) の10%、1,000隊 (3,000人~4,000人) の利用を目指しています。

7.【取材後記】

仕事に誇りを持ち、あきらめることなく、常にもっと良い方法がないか研究し続けて前進することで、時代を切り開いてこられたお二人の力で、救急救命の世界が大きく改革されるのではないかと実感しました。社名のピーエフシーですが、「P」はPride、「F」は、Forward 躍進、そして「C」はCreate 創造から名付けられたそうです。「30分、蘇生が早ければ今も生きていたかもしれない」とおっしゃる奥様への愛情。「人の命を早く救う為に・・・」と、誇りを持って、現場から求められる価値をICTで生み出し、事業化を実現する松田社長のパワーの源を垣間見るインタビューとなりました。CEMSは、1分1秒の重みを知る人達から生まれた「命を救うシステム」と言えるのかもしれません。

(参考)
*CEMS・・・Cloud EMS Support System の略。シーエムス。クラウド救急支援システム
*クラウドテストベッド・・・NICTが管理・運営する新世代通信網テストベッド(JGN-X:JGN eXtreme)

◆平成23年度情報通信ベンチャービジネスプラン発表会のリンク先
http://www.venture.nict.go.jp/event/node_3774/node_37590/node_37108/node_37431/node_37511

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