トップ > 連載・コラム > 注目のベンチャー紹介 > 株式会社 笑農和 代表取締役 ...

next pre up

株式会社 笑農和 代表取締役  下村 豪徳 氏   <平成26年度 起業家万博 発表企業>

農作業にITを!農家の労力とコストの削減を目指す「水位調整サービス」とは?

 

1. 初めに
2. 【遊びに行けないゴールデンウィーク】
3. 【良いものを作れば作るほど利益が減るのはナゼ?】
4. 【高齢者とITの架け橋に】
5. 【水門の開閉を管理する画期的なシステム】
6. 【ドローンも活用!?ますます広がる可能性】
7. 【ITの力で農業をもっと面白く!】
8. 【農業を1つのライフスタイルに】
   企業プロフィール

0630enowa01a

 

1. 初めに

 高齢化、後継者不足、耕作放棄地の拡大…、日本の農業は実に様々な課題に直面しています。
今回ご紹介する株式会社笑農和(えのわ)は、ITの力を駆使して農家が抱える課題を解決しようと
平成25年に富山県滑川市で設立されたベンチャー企業。
自らも水稲農家の長男だという創業者で現代表取締役社長の下村豪徳さんが掲げる経営理念は、
「IT農業を通じて笑顔の人の和を創り社会に貢献する」。
この理念を実現する第1歩として打ち出したのが、「水稲農家向け水位調整サービス」です。
農業の現場を知る下村さんならではのアイディアが光るサービスについて、今後の展望を聴きました。
                                                                  ↑ top

2. 【遊びに行けないゴールデンウィーク】

 下村さんは昭和52年(1977年)、富山県中新川郡立山町生まれ。
立山黒部アルペンルートの玄関口・立山町は人口2万7000人余り。質の良いコシヒカリの名産地として知られています。

下村さんの実家も代々続く水稲農家で、約2町(2ha)の田を所有。下村さんは物心ついたころから、農作業をする両親と祖父母の姿を見て育ちました。
当然、田植えや稲刈りの農繁期には、農作業に駆り出されていた下村さんでしたが、子どもの頃は農業に全く興味がなかったといいます。
「特に田植えの時期は嫌でしたね。富山の田植シーズンはちょうどゴールデンウィークの頃なんです。他の友達は家族で旅行や遊びに出かけるのに、農家は1年で一番忙しい時期ですから、我が家は遊びどころではありません。きつい仕事なのに休みも少ないなんて、農家って割が合わないなぁと幼心に思っていました」と下村さん。

 小学生時代はゲームにハマり、中学生からはバンド活動に熱中。短大卒業後は農業とは全く関係のないIT系の仕事を選択、地元企業のシステム部門に入社すると、SEを皮切りに営業職やマネージャーを歴任、システム開発から新規事業の立ち上げまで様々な経験を積みました。
下村さんに転機が訪れたのは、入社16年目のこと。当時、所属していた関連会社が業務縮小で解散することになったのです。
 

0630enowa04

                                                                  ↑ top

3. 【良いものを作れば作るほど利益が減るのはナゼ?】

 その数年前から独立してビジネスを始めたいと考えていた下村さんは、これを機に退社を決意。
退社後しばらくは、自分の持つIT技術と人脈、知識などをベストな形で社会に還元できる仕事は何だろうか?と模索する日々が続きました。

そんなとき、下村さんは実家の農業を継いでいた弟に頼まれて収支計算をすることに。
「収支計算をしてみると、実家の農業の収益が徐々に落ちてきていることに気づきました。特に有機農法に切り替えてからの落ち込みが大きかったんです。
より安全で美味しい米を作ろうと努力しているのに、収益が減ってしまうのはなぜなんだろう?良いものを生産すればするほど損をするなんて、何かがおかしい、どこかに改善の余地があるに違いないと思いました」と下村さん。

そこで改めて農業を取り巻く状況を調べ、観察した下村さんは、ある結論にたどり着きます。
「よく『農業は儲からない。だから後継者もいなくて、高齢化に歯止めがかからないんだ』という人がいます。
僕も初めはそう思っていました。でも、よく考えるとそんなことは決してないんです。農業でもしっかり稼いで成功している人は、たくさんいるんですよね。
では、成功する農家とそうでない農家を分けているのは何か?それは、仕事に対する考え方の違いと、ITを活用できるか否かの違いだけだと思うのです」。

                                                                  ↑ top

4. 【高齢者とITの架け橋に】

 では、下村さんが農業で成功した人たちの話を見聞きして感じた「考え方の違い」とは何なのでしょうか?
「簡単にいうと、成功している人たちは創意工夫をして『できること』を探しています。
独自の販路を開拓したり、新しい品種を栽培したり、新しい農法を取り入れたり…。
一方、農業の現状を嘆いている人は、後継者もいない、儲からない、面白くない…、という具合に『できないこと、足りないこと』を嘆きつつ、旧態依然とした栽培法、売り方を淡々と続けているのみ。
この違いはすごく大きいと思います」と下村さん。

 もう1つ下村さんが着目したのは、農業で成功を収めている人の多くがITの力を駆使していること。
「例えば東北地方でイチゴの栽培を手掛けているある農業法人では、ビニルハウス内の温度・湿度管理から給水まで栽培管理の大部分をIT化することによって、少人数で高級イチゴの栽培に成功。最近では海外進出を果たしたと聞いています。
ただし、そういった取り組みの多くは、ITに強い若手農家やIT企業出身の経営者が率いる農業法人によるものがほとんどです。
一般的な農家にはちょっとハードルが高いですよね」。

確かに、農林水産省の統計によると、農業従事者の平均年齢は65.8歳、富山県では68.5歳(いわゆる専業農家=基幹的農業従事者は69.9歳)で、スマホやパソコンを日常的に利用することが少ない世代です。
「だからこそ、ITの便利さ、素晴らしさを実感してほしいと思いました。そのきっかけづくりのために開発したのが、田の水門開閉等を自動で行う水位調整サービスです」と下村さん。

 

0630enowa02

 

                                                                  ↑ top

5. 【水門の開閉を管理する画期的なシステム】

 「水門」は一般の人にはあまりなじみがないものですが、農家の人にとっては米の出来不出来を決める重要なアイテムなのだそうです。
下村さんいわく「水稲農家の1日は水門を開けて用水路から田に水を流し入れることから始まります。
田の水がぬるくなると米の味が落ちるので、毎朝欠かさず、冷たくて新鮮な水を入れる必要があるのです。
とはいえ流しっぱなしでは田に水が溢れてしまいますから、開いてから数時間後には水門を閉めに行かなくてはいけません。
たまに木の枝や枯葉などが詰まって水が入っていないこともあり、そうなると、またやり直し。簡単なように見えて、すごく手間暇がかかる作業なんです」とのこと。

「特に最近では高齢で農作業ができなくなった近所の農家から頼まれて、よその家の田でも米を作っている農家が多いんです。
そうすると家から離れた田んぼまでわざわざ車で水門の開閉に行かなくてはならず、ガソリン代もかかります。
あまりに大変なので、水門の開閉のために人を雇っている農家もあるんですよ」。

 もしも水門の開閉にかかる時間と労力を他の作業に使えたら、もっと効率的な農業経営ができるのではないだろうか…。
こう考えた下村さんが考案したのが「水稲農家向け水位調整サービス」。
ITセンサーを田に設置して水位や水温を監視、手元のスマホやパソコンを操作して水門を自動で開け閉めできる画期的なシステムです。
「水位や水温のデータが蓄積できるので、次年度以降の栽培品質向上にも役立てることができます」と下村さん。
ビジネスの収益源はシステムの管理費で、田1枚あたり1万8000円を予定しています。
2016年のサービス・インを目指して現在、センサーや水門の開発中。
センサー等の完成後は実証実験を行うと同時に普及に向けて地元農家への営業活動を行う予定です。
「センサーや水門が出来上がっても、使いこなせなければ意味がありません。農家の皆さんにIT導入の意義を根気強く啓蒙していきたいと思っています」。

 

0630enowa03

 

                                                                  ↑ top

6. 【ドローンも活用!?ますます広がる可能性】

 同時に水位調整サービスのさらなる充実にも取り組んでいるという下村さん。
「センサーの代わりにドローンを活用することも検討しています。センサーは田1枚につき1台設置しなくてはいけませんが、ドローンなら1台で4~5枚の田を監視できます。またドローン掲載のカメラに特殊な機能をつけると、稲に含まれるたんぱく質含有量を測定することが可能に。
アミノ酸などのたんぱく質の量が足りないと米の味が悪くなってしまうので、数値が低下していたら肥料を追加するなどの処置をします。
そうすることで高品質を維持し、収益を向上させることができます。この仕組みを活かして肥料メーカーとタイアップしたサービスが展開できないか、可能性を探っているところです」とのこと。

 実は起業家万博へ出場した狙いの1つも、新しいビジネスの可能性をさぐることだったといいます。
「水位調整サービスはまだサービス・インしておらず、不完全な状態です。でも、あえてその状態で出場することによって、たくさんの方々に知ってもらえましたし、ご意見やアイディアをいただくことができ、感謝しています。
特にメンターの安達俊久さん(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社代表取締役社長)には、収益確保のためのビジネスモデル構築の必要性など実践的なアドバイスを頂くことができ、心から感謝しています。

 

0630enowa09

 

                                                                  ↑ top

7. 【ITの力で農業をもっと面白く!】

 下村さんが提案するのは、水位調整サービスだけではありません。
圃場ごとの作業計画から作業実績、使用農薬・肥料などを記録できる「クラウド農業日誌」、栽培施設内の日照量や温度、湿度、CO2や光合成有効放射(PAR)等を計測して栽培のばらつきを防ぐ「施設センシング」など、ITで農業の効率化を図るための様々なサービスを提案しています。

 しかし前述したとおり、営業先の農家の多くはITに不慣れな高齢者。話すら聞いてくれないケースも多々あったそうです。
「でも、身近なところに1つでも成功例を示すことができれば、少しずつ周囲の関心を喚起できるはず。
まずはITへの苦手意識を払拭してもらうための講習会を開いたり、ITアドバイザー的な存在となる人材を地域ごとに育成するなどの取り組みを続けたいと思います」と下村さん。
「ITの力で、ここ20年ほどの間に社会は大きく変わりました。不可能だと思われていたことができるようになるなど、人々のライフスタイルもずいぶん変わりました。そんな中にあって、農業はITの恩恵を十分に受けてきませんでした。
農業の危機が叫ばれる今こそ、ITの力で農業をもっと面白くしたい、農業の可能性をもっと広げたいと思います」。

 

0630enowa06

 

                                                                 ↑ top

8. 【農業を1つのライフスタイルに】

  笑農和では農家へのIT導入支援サービス事業と同時に、自ら農業にも取り組んでいます。
下村さんの実家の田で家族が栽培した無農薬米を独自の販路で販売、全国にファンを獲得しているのです。

「農協を通じて販売すると、自分の米を誰に買ってもらっているのかがよくわかりません。
でもネット等で直接販売をしてみると『今年も美味しかったよ』などと感想のメールが届いたり、
『下村さんのところのお米じゃなきゃ』と毎年購入してくれる固定ファンがついたりして、やりがいも大きくなりました。
ITは無機質だと思っている方が多いですが、ITを使うことによって逆にお客様と顔の見える関係が築けるんですよね」。

 そんな下村さんの販売方法を耳にして、「うちの作物も売れるようにしてほしい」と近隣の農家の方が相談に訪れるケースも増えています。
下村さんがサポートしてネットショップや各地のイベントでの販売に踏み切った農家も少なくありません。
「ちょっとしたアクションで世界が広がると、みなさんすごく楽しそうな、イキイキとした表情になるんですよね。
僕はそれがとても大事だと思うんです。楽しそうに働いている人の周りには人が集まってきますから。
これからもITを使ってどんどん面白いことをしかけていきます。
そして従来の『休みがなくて大変で、しかも儲からない』という農業のイメージを払拭し、
『面白い農業をしながら自然と共に楽しく暮らす』というライフスタイルを、みなさんに提案していきたいですね!
そして笑農和の社名どおり、笑顔で農業の和を広げていくのが僕の夢です」。

 水位調整サービスの実証実験を始める予定の2015年は笑農和にとって勝負の年。
笑農和が手掛けるITと農業の融合が、日本の農業をどのように変えていくのか、今後が楽しみです!

 

 
 

enowa01

0630enowa08

 

                                                                  ↑ top

◆ 平成26年度 起業家万博  (情報通信ベンチャー・ビジネスプラン発表会)
   開催報告  http://www.venture.nict.go.jp/unpaku2014/report
プレゼン映像  http://www.nict.go.jp/video/banpaku-2014-06.html
 

 
企業プロフィール
 

 
株式会社 笑農和

 
概要

 
2013年2月創業。
 
経営理念
「IT農業を通じて笑顔の人の和(輪、コミュニティ)を創り、社会に貢献する」
 
主な業務内容:
・農業IT支援
・農家販売支援
・セミナー・講習
・中小企業向けシステム開発
 
ミッション
「家族経営であっても儲かるモデルを創造する」
「ITを活用した次世代農業をグローバルに発信する」
「Japanクオリティの農産物をグローバルに販売する」
 

 
窓口・情報

 
URL: http://enowa.jp/
 

next pre up